スポーツ仲裁機構へ申し立てを行いました

カノミナミ2022年6月9日

今年6月11日に韓国ソウルで行なわれるアジア選手権大会の選手選考に納得できない部分があり、スポーツ仲裁の申立てをしました。

フェンシング協会が出した選手選考方法に記載されていた選考基準ではFIE個人ランキング上位4名(5月8日時点)となっていて、5月8日時点の私のランキングは4位でした。
しかし、コーチからは4位の私ではなく、5位の選手を個人戦に選んだ、と告げられました。

選考基準には注意書で、「海外情勢等やむを得ない欠場で大会に出場できていない選手の順位の妥当性を強化本部・選考委員会にて協議し決定」する旨の記載がありました。
↓選手選考方法
https://fencing-jpn.jp/cms/wp-content/uploads/2022/04/00b14254ead31ae551f905fe25fd1af1.pdf

そして、スポーツ仲裁での争点は5位の選手が出場できなかったメキシコ大会が、注意書の「海外情勢等止むを得ない事情」の大会に該当するかしないかでした。

私がコーチ、強化本部長、会長から直接受けた説明では、5位の選手の世界ジュニア選手権大会のために戦略的にその大会を欠場させた、と説明されました。
そのため、派遣しなかった理由としては海外情勢等の理由ではなく、戦略的な理由ということだったので、納得できませんでした。

6月1日に審問が行われ、6月2日に仲裁判断が出ました。
結果としてはこちら側の主張は認められず、選手の入れ替えは行われませんでした。
しかし、協会側の主張も受け入れられたわけではなく、申立費用は、普通負けた方が払うのですが、協会の負担になり、私の申立の正当性は認めてもらうことができたことが少し救いでした。
仲裁判断では、「選考基準がより具体的であれば紛争は生じようがなかった」「FIE 個人ランキングに基づき選考を行うことを原則として定めたのであれば、例外についても、当該時点で想定しうる可能な限りの客観的で明確な基準を定めるべきであった」「本件選考方法のほかに代表選考に関する手続を定める規定がないことや、ワールドカップの派遣基準がないことも同様に協会の不備といわざるを得ない」「本件スポーツ仲裁パネルは、申立人が仲裁申立てに至った経緯に対し、被申立人(=協会)は真摯に寄り添うべきであり、申立人に経済的負担を強いることは妥当でないと考える」と明記したうえで、協会が申立費用の負担をすべき、と判断されました。

仲裁人が判断した結論から言えば、5位の選手本人の意思に反して大会に出場できなかった事実がある、ということで協会のせいで本人が大会に行けなかったからやむを得ない、ということでした。
正直仲裁判断を見た時はとてもショックでした。しかも協会が主張していた治安の問題での欠場とは認められなかったにもかかわらず、協会の落ち度で出られた試合に出られなかった選手が可哀想だよね、ということで決まったように思えたからです。
実際、私も5位の選手も協会の杜撰な選手選考の被害者だと思いますが、その杜撰にした尻拭いをなぜ非のない私がしなければならないのか、というところに本当に違和感と不公平さを感じます。

今回の申し立てに関してはこちらの主張が絶対的に正しいと私は確信しています。
結果的には主張は認められませんでしたが、一方で協会側の主張も認められていません。
詳しくは仲裁判断を読んでいただきたいです。日本スポーツ仲裁機構のホームページで公開されています。
https://www.jsaa.jp/award/AP-2022-002.html

協会がこのことをどう受け止めているかはわかりませんが、内部で責任の押し付け合いをしたり、どうにか理由をこじつけて取り繕おうとせずに、もっとこの選手選考方法の作成や選手選考をした一人一人が、選手が競技に人生をかけて真剣に向き合っているのと同じように、真摯に向き合ってほしかったです。

今回、この申立てをするにあたり、高松政裕先生と馬淵雄紀先生に弁護をして頂きました。緊急仲裁ということで、タイトなスケジュールの中、本当に私のために尽力してくださいました。初めてのスポーツ仲裁でわからないことや不安なことがたくさんありましたが、私に主張は間違っていないから堂々としていたらいい、と背中を押し、支え続けて下さいました。
判断が出た後もパリが決まったら応援に行きます!応援してます!と言ってくださり、とても心強く、ありがたく、本当にこのお二方に弁護を依頼してよかったと思いました。
普通に生活している中で弁護士さんのお仕事に触れる機会がないので、今回、文書の作成やその内容、さまざまな手続きを見ている中で、やっぱり弁護士さんってすごい、、、と新しい世界にも触れることができました。
また、現在サポートを受けているEXDREAMSPORTSの安藤さんがスポーツ仲裁を勧めてくれ、資料作成など、専門的な部分で私が十分にできない部分を全てしてくださり、フェンシング関係者として最後まで味方をしてくれ、戦って下さいました。
所属会社も今回の申立てに関して私の意思を尊重してくれ、背中を押してくれました。
フェンシング界で味方のいなかった私の心支えとなり、一緒に戦ってくださったみなさんに本当に感謝しています。

短い期間の戦いでしたが今回の一件で私も自信を持つことができたし、選手個々人はなかなか協会からなされた決定に不服があっても声を挙げることなく、従うしかないのが現実ですが、勇気を振り絞って異議申立てをすることができ、より一層逞しくなれたと思います。

最終判断に関しては前にも書いた通り腑に落ちない部分もありましたが、この経験は私の競技人生においてプラスにはたらく良い経験だったと思います。
素敵な方達とのご縁もでき、これからはもっと高いモチベーションを持って全力でパリに向かって進んでいきたいと思います。

ちなみに、今回の申立ての手続き面でとても勉強になったことがあります。
最初はスポーツ仲裁の申立てをすると考えた時に、弁護士さんにお願いするととても費用がかかるのではないかと思い不安でしたが、日本スポーツ仲裁機構には手続費用の支援制度というものがあり、支援要請が認められれば30万円(税別)の支援を受けることができることを知りました。今回の私のような経験をしないに越したことはありませんが、この制度を知ってスポーツ仲裁のハードルが下がったので、是非アスリートのみなさんに知ってもらいたいです。

いつも応援してくださる皆様に本当に感謝しています。
今後も応援よろしくお願い致します!